個人文庫 篠原泰三文庫・業績
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篠原教授の業績を顧みる

篠原教授は一貫してよい教育者であり続け,海外渡航(1943.8~44.2の中国,1950.10~51.1のパキスタン,1956.8~57.9の米国の3回)と兵役(1945.7~9)の期間を除いて,40余年の間学生の教育に専念してこられた。特に授業に際しての,言葉を選びながら展開された綿密で厳格な論旨は学生に大きな教育効果をもたらした。ややもすると経済理論の理解に欠ける農学部の学生に経済学の基礎を修得させることが出来たとなしえよう。大学院学生に対する授業はゼミ形式で,産業連関分析,農業立地論および地域構造,土地改良と土地資本などをテーマにした授業を行い,上記著作目録にみられるように,ゼミ生による研究成果の刊行を生み出している。また,ゼミ参加者の多くは各地大学での教育者となった。

 大学院のゼミから生まれた業績以外の篠原教授の研究業績を特徴づけると,以下の4点が指摘できる。

 第1に,篠原教授の研究態度は,一貫して特定の課題を追究するというものではなく,経済学的分析手段をその時々の農業,経済の課題に適用するというものであった。そのため,論文の多くがその時々の農業,経済問題を課題としたものとなっている。

 第2に,以上とも関連するが,論文目録は戦時下の食料問題からはじまり,戦後復興,日本経済の国際化の下での農業問題を解明してきたことを示している。なお,篠原教授は学園紛争下で農学部長を勤めた際に健康を害されたために,その後の著作活動はほとんど見られない。もっとも日本大学農獣医学部での教育と翻訳は続けておられた。 

 第3に,一貫して資本主義経済の欠陥を指摘してこられた。特にピグーの業績に基づいた公害(A.C.Pigou,Economics of Welfare,4 ed.,1932に依拠している。なお,32年版の公害に関する論旨は20年版のそれと全く同じである),失業の問題に関しては先駆的業績を残している。今日の環境問題の深刻さを予告したものとなしえよう。公害に関するカップの著作の翻訳も大きな影響を与えたものであった。

 第4の特徴として,農業経済,農業政策,経済学,地域経済の文献の翻訳が多いことが指摘されよう。特に難解なピグー,レッシュの翻訳は大変な業績である。いずれの業績も一字一句まで吟味して書かれており,示唆に富んだものである。                               
                                      (逸見 謙三) 



経歴

主な著作、翻訳